はじめに
不妊治療と聞くと、「高額医療」のイメージをもつ人が多いでしょう。
しかし、この「高額」と言われるものの、具体的な内容について知っている方は、あまりいらっしゃらないと思います。
”体外受精”と聞くと、採卵や培養といった「技術面」の費用が多くを占めている、と思われている方がほとんどではないでしょうか。
しかしながら、実際に体外受精をした人の話を聞くと、そのかかった費用は個人によって様々で相場が予想しづらいと感じる方も多いと思います。
この差はどこからくるのでしょう。
実は不妊治療で技術面と同じぐらいに費用がかさんでいるものがあるのです。
それが「注射代」です。
今回はわたしが不妊治療の最終段階と言われる顕微授精をした際にかかった費用を中心に、治療でつらかったことも合わせて、お伝えしたいと思います。
不妊治療の実態を多く方に知ってもらい、不妊治療を頑張っている方の励みになれば幸いです。
培養…体外で受精を受精させて培養する技術
いきなりステップアップした理由
受精卵の元になる原始卵胞が少ない
=毎月生理で原始卵胞は減っていく
=まだあるうちに体外受精で採れるだけ採った方がいいのではないか
だからいきなり何もかもすっ飛ばして、不妊治療の最終段階(一番高額帯の治療)と言われる顕微鏡受精に踏み切りました。
ステップアップすることに迷いはなかったのか
回答➡「はい、ありませんでした」w
他のクリニックがどういうスタンスでやっているかわかりませんが、わたしが通っていたクリニックの院長はあまりいろいろと意見をしてこないタイプでした。
わたしが何も言わなければ、おそらく順番通りのステップを踏んでいたと思います。
ここで、
一般的な不妊治療の流れをご説明しておきます。
※医者ではないのでかなりザックリな説明になることをご容赦ください。
- タイミング指導
医者がエコーで卵巣内の卵胞の成長度合い(大きさ)、子宮内膜の厚さを見て、排卵のタイミングを見定めて、いわゆる”決戦の日”を伝えるもの - 人工授精
精子を体外に採りだして、女性の子宮に入れるもの男性側に原因があったり、セックスレスだけど子どもが欲しい、と考えている場合に採用されることが多い
- 体外受精
薬や注射で卵巣を刺激して、排卵候補となる原始卵胞を成長させ、すべて成熟卵胞にして体外に採り出すものシャーレ上で卵子に精子をふりかけて「体外で」受精させる
数日培養した受精卵を子宮に戻す - 顕微受精
卵子を体外に採り出すまでは体外受精と同じ。顕微鏡下で一匹の精子を直接卵子に挿入して受精させる数日培養した受精卵を子宮に戻す
普通に考えれば、できるだけお金をかけずに成功するのが一番なので費用・身体へ負担が少ないステップから順に進めていくものです。
しかし、繰り返しますが、わたしには時間がなかったのです。※やや思い込みも入ってる
というかわたし、せっかちなんです!?
検査結果を聞いて、いても立っていられず、とにかく「急がねば…」という気持ちになっていました。
卵巣年齢は名前の通り、年齢を重ねるほどにその機能は衰えていきます。
ただでさえ、実年齢より10歳も老化しているわたしの卵巣。
当然年数を重ねればその数少ない卵胞たちも年を重ねてしまう=老化してしまう
少なくても質のいい卵をできるだけ早く採っておくべきだと思ったのです。
辛かったことベスト3
①一本数万円の注射代!?
というわけで、かくかくしかじかあって顕微鏡受精をすることにしました。
まずは生理周期を整えるために、ピルを飲んで次に来る生理周期をコントロールすることからスタートします。
【補足】治療のおおまかな流れ
卵巣内では生理が始まったときから、次の排卵に向けて原始卵胞が成長をはじめます。
卵巣を内服薬や注射で刺激して、できるだけ多くの卵胞を成長させて、ベストなタイミングで、排卵を促す注射をして、採卵する流れになります。
わたしはこのピルが何回やっても身体が慣れず、毎回これには振り回されていました。
副作用がつわりに近い感じで出て、通勤電車で途中下車したり、仕事中吐きそうになりながら耐えていました苦笑
ピルを飲んで生理を人工的に起こした日から何種類かの注射を打っていきます。
わたしが初回にした方法はアンタゴニスト法と言われるもの。
専門家ではないので、詳しく説明はできかねますが、要は
注射をいっぱい打って卵胞を成長させよう!
と言った方法です。←かなりざっくり
この注射のお値段がとにかく高いのです。
もう10年前の価格になりますが、ここで当時かかったリアルな注射代を公開しちゃいます。
注射名 | 目的 | 料金 |
ゴナールエフ3本 | 卵を育てる | 112,930円 |
ガニレスト3本 | 排卵をコントロールする | 22,620円 |
HMGフェリング4本 | 排卵を促す | 18,600円 |
10本の注射にかかった費用は合計154,150円!!
いま改めてみると驚くほど高額ですね。
注射代金の詳細については、個人差があることから、治療当初に説明される価格表には載ってきません。
注射代…患者様によって使用量や注射薬が異なります
とだけ記載されているのみです。
個人の体質、卵の成長具合、様々な状況から医師が判断して、注射の本数や種類を決めるため、注射代金の一般価格というものは、わかりづらい傾向にあります。
個人的に、この注射代金の負担費用が予想しづらいといったことも、不妊治療を敬遠させる要因になっている気がします。
やる前からおおよその金額の予想がしづらいんですよね。
自分の体質もわからないので、結局はやってみないとわからない。
②注射は自分で打つ
この一本数千〜数万円する注射を毎日打たねばなりません。
仕事の都合や交通費を考えると毎日打ってもらうため、通うのは非効率です。
そのため、初回に自己注射指導を受けて、毎晩自分で打つのです。
注射のタイプもいろいろでペンタイプのものから自分でアンプルを混ぜ合わせて注射器に入れて打つものまでさまざまでした。
予想がつくと思いますが、この”本格的注射”と言われるものは毎回緊張していました。
注射自体はさほど苦手ではないタイプでしたが、自分で打つとなるとさすがに抵抗をかんじました。
- 自分のウデ(技術?)が信用できん
- アンプル容器が繊細すぎて割ってしまっらウン万円が飛んでしまう
- うっかり落としてしまったらホルモン周期が狂うからもう一度リセット
とにかくお金がかかっていることが、わたしにはプレッシャーでなりませんでした
③予定調整
ここまで述べてきてお察しの方もいらっしゃると思いますが、体外受精では全てのホルモン周期を薬や注射によってコントロールされます。
病院に行って内診してもらい、明日も来て、と言われることはよくあること。
そして採卵する日や移植の日も3日ぐらい前に指定されます。
少しずつ不妊治療は広く知れ渡ってきてはいるものの、短期間に不規則に仕事を休んだり、遅刻・早退勤務が多くなってしまう部分についてまでは、まだ世間に浸透していない印象があります。
不妊治療をしていることを周りに言っていないと、不規則出勤を周囲の人から不審がられます。
また、不妊治療をしているとはいえ、実態を知らない人がほとんどなので、上司や同僚の中には、口にこそ出しませんが「そんなに頻繁に(しかも急に)休まないといけないわけ?」と怪訝そうにする人もいるのです。
また1回の周期で妊娠するとは限りません。
そうなるとこの不定期な勤務が長く続いてしまうことは往々にしてあるのです。
おわりに
今回は体外受精の流れの中でも、特に”注射”に焦点を当てて、体験談をお話ししてきました。
不妊治療をされたことがある方ならお分かりかと思いますが、不妊治療は保険適用外ということもあり、一つ一つの項目が高額になりがちです。
しかし何度も通っていると次第に金銭感覚が麻痺してきて、会計が2万円ぐらいで済んだ日は”今日は安かったな”と思っていたほど笑
わたしは共働きということもあり、お金より赤ちゃんが欲しいことに躍起になっていましたが、世の中お金がなくて諦める夫婦も多いと聞きます。
年々出生率が下がる数字を見るたびに、残念な気持ちになります。
2022年4月~不妊治療の保険適用の範囲が拡大され、現在は人工授精や体外受精といった治療においても条件を満たせば、保険が適用されます。
子どもを望む夫婦にとって、金額面における負担が減ったことは、大きなメリットですね。
女性の社会進出を後押しする風潮になってきている世の中は、いいように見えて、一方でますます出産しづらい状況を作っているようにも思います。
仕事と育児の両立を考えるのと同じぐらいに、仕事と治療の両立しやすさについても理解が進む世の中になるといいな。。。
後々話しますが、妊娠するにあたって”ストレス”は1番の敵なのです。
妊娠しづらい女性が増えている背景には、このストレスが大きく関わっていると思います。
話が少し逸れてしまいましたが
次回はいよいよ育てた卵子を採って、子宮内に戻(移植)す編です。
ご興味がある方はぜひご一読ください。
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